【 ルイXVI世様式 】1760年-1789年
ルイ15世時代のロココ様式とは対照的な直線ラインが復活する。全体にスッキリとして細身なシェイプが主流。
家具類の脚などは真っ直ぐでカヌレと言われる縦に溝を彫ったスタイルが流行する。一説に17世紀に発見されたポンペイの遺跡からの発想ともいわれる。装飾のモティーフとしてはリボンやガーランド(花や果物を繋いだ花綱)、ローリエ、ペルル(パール)、リュボン・クロワゼ(カヌレされた棒をリボンをXに結わえたモティーフ)などの連続模様の縁飾り、ロザースと言われる丸い花形など、
この時代に考案された瀟洒な装飾パターンは数多い。
花が好きだったマリー・アントワネットの趣味も反映されているのかも知れない。
この時代に発案された家具も女性的な繊細なものが多く、ゲリドンと呼ばれる小さな丸テーブル、背もたれが楕円形の肘掛椅子、ボナー・デュ・ジュールと呼ばれる小さくて軽い書物机などいずれも小ぶりで優美なスタイルである。
20世紀初頭のランプのルイ16世風な脚(左) カヌレやロザースが典型的な椅子(右) |
マリーアントワネットの為のセーブルの皿(左) 現代のルイ16世風ゲリドン(右) |
【 帝政時代(Empire=ナポレオン)様式 】1804年-1815年
1789年にフランス革命が起きブルボン王朝が一旦崩壊した後、ナポレオンが皇帝となって第一帝政を樹立するまでの15年間はフランス第一共和政時代と呼ばれるが、この混乱の時代の様式としてはDirectoire(総裁政府)様式と呼ばれるものがあり、これがEmpire様式の前身である。
ルイ16世様式の骨格を残したまま優美な装飾を排し、ギリシャ時代風なよりクラシックでシンプルなDirectoire様式及びEmpire後のRestauration(王政復古時代)様式は特筆すべき強いキャラクター性も少なく、凡そ同じ系統なので、大雑把にEmpire様式に総括されることが多い。
Empire様式の特徴は、良く磨かれたマホガニー材に真鍮の装飾を施した重厚な家具類にその典型が見られる。真鍮飾りは多くの場合金メッキがほどこされ、脚の付け根や足先、平らな面などに組み込まれたり、貼り付けられたりする。基本的なラインは幾何学的でシンメトリック。装飾のモティーフはギリシャ神話関連、エジプト関連の他、ナポレオン自身の力や闘争心を表す鷲、蜂、白鳥、月桂冠、パルメットなど力強く華麗なものが多い。
ハンドルのシェイプや絵付けの派手さが典型的なEmpireスタイルの器(上) ナポレオンがダヴィッドに描かせた肖像画で有名なレカミエ夫人の館から 出たものといわれる1800年頃のベッド(下) |
古代ギリシャの松明を模したEmpire風シャンデリア 20世紀初頭 |
【 ルイ・フィリップ様式 】1830年-1848年
ナポレオン失脚後、第二共和政がしかれる1848年までの王政復古時代は、ルイ18世、シャルル10世、ルイ・フィリップと続くが、時代様式的にはシャルル10世様式(1824年-1830年)までをRestauration(王政復古時代)様式と呼び、その後のルイ・フィリップ時代様式と分けている。
シャルル10世様式はEmpire様式の威風堂々たる感じが取れて優しく明るく控えめになり、素材も変わるが、基本的にはEmpire様式とほぼ同じシェイプ、似通った装飾モティーフを踏襲している。
ルイ・フィリップ様式の特徴は皮肉にもオリジナリティの無さにある。基本的には前時代までのスタイルの延長なのだが、それまでのエレガンスは維持されるどころか、さっぱりと捨て去られる。家具などの製作は機械化が急激に進み、それまでの手作業による凝った装飾などは滅多に見られなくなる。良くも悪くも近代化、平均化社会の兆しが見え始める。この時代の家具はそれまでの時代の物に比べて質朴剛健に出来ているためか、大量に作られたためか現代でもまだ本物がさほど珍しくなく見られる。また、現代物のルイ・フィリップ様式家具というものも大量に作られており、IKEAの家具を使うレベルの一段上ぐらいの中流層の定番となっている。シンプルで嫌味の無い、しかし面白みも無いスタイルである。
ルイ・フィリップ様式にしつらえたインテリア 20世紀初頭の写真 |
現代版ルイ・フィリップ様式の寝室 家具屋の広告より |
今回はこの辺までにしておきます。次回は、ナポレオンⅢ、アールヌーヴォー、アールデコです。 どうぞお楽しみに!
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