2013年10月20日日曜日

卓上に咲いた花 -或る朝の情景-

最近どういう訳か、花瓶が続々集まってきて、テーブルや棚が混みあっております。
花が沢山生けられる太っ腹な花瓶、バラ一輪がやっと挿せるスリムな一輪挿し、短く切ったお花を活けたり茶入れにしたりする小さなもの、花を生けずにそのまま飾って眺めたいもの、等々。
意識的に探して買い集めているつもりはないのですが、勝手に寄ってくるのです。
そうした花器達はおしなべて花を生けて欲しそうではなく、自分が花であるかのようにテーブルの上や棚の上に飾られたそうに見えるので、ストック部屋にしまっておく訳にもいかず、それなりの場所を探してあげないといけません。
たまたま庭で切ったバラが一輪と近くのレストランで貰ったバラが一輪あったので、バカラとガレの一輪挿しに挿してみました。
なかなか良い感じです。我家の食卓にはランプ類の花が常に咲いているので、あまり目立ちませんが、然るべき所に飾ったら素敵でしょうね。

 庭のバラをバカラ(左)に、レストランで貰ったバラをガレ(右)に、真ん中は昨日来たばかりの朝顔風オパリーヌの一輪挿し

薄日が射した朝の卓上庭園(?)。ちょっと賑やか過ぎ。

2013年10月12日土曜日

アンティーク・ガラス豆百科 -その20-

日本は夏に逆戻りしたような暑さだとか…。もう暑いのはウンザリという人も多いことでしょう。
パリは秋というより冬が来てしまったかのように寒いです。
我家では暖房を入れておりますし、散歩の時はダウンジャケットです。
秋は骨董市が多く、アンティック姉妹社Parisのスタッフ(私と夫)はお宝探しに出かけたり、発掘品をHP上にご紹介するための作業などで、けっこう忙しくしておりました。と、またブログをサボっていた言い訳を自分にしております。

【アール・デコのガラス】1910年代から1930年代まで 《フランスの主な作家達 Ⅱ》

Marcel GOUPY マルセル・グピー(1886-1954)
パリ国立装飾美術学校出身のグピーは絵画、陶芸、建築、彫金、そしてガラス装飾と何でもこなすマルチ・アーティストとして知られ、1919年からパリのオペラ通りに店を構える有名な高級工芸品を扱うギャラリーGEO ROUARDのお抱えアーティストとして、エナメル彩ガラス作品を発表し続け、1929年以降はこのギャラリーのアート・ディレクターを1954年(没年)まで務めた。
グピーのエナメル彩ガラスの特徴は、アールデコ的にデザイン化された絵柄や模様が美しい色彩でくっきりと鮮やかに施され、非常にスタイリッシュであることだ。こういった表現を可能にする技法も工夫されたのもので、焼き戻した時に色が流れないように金や煤でアウトラインを引いたり、表面のエナメルの色が混じることなく、しかも奥行を出すためにガラス器の内側からもアエログラフ(エアブラシ)でエナメル彩を施したり独自のテクニックが駆使されている。
早くから美術館に作品が買い上げられ、アールデコ期のガラス装飾家として第一人者と認められた作家だけに作品は高価で、あまり市場に出回らない。

Georges CHEVALIER ジョルジュ・シュヴァリエ(1894-1987)
パリ郊外のヴィトリー・シュル・セーヌに生まれる。パリ国立装飾美術学校在学中の1912年より先輩デザイナー、モーリス・デュフレーヌ(同学卒業者で後にギャラリー・ラファイエットのアートディレクターを務めた有名デザイナー)のアトリエに呼ばれ、ブルジョア階級の為のテキスタイル、絨毯、陶器、刺繍、室内装飾などのデザインをする。
シュヴァリエのエレガントで渋く、伝統を踏まえながらもモダンな感性はデュフレーヌの影響と見られる。
卒業後1916年よりバカラに入り、1970年代までの長期に渡り専属デザイナーとして活躍する。1925年のアール・デコ博の折には、ガラス製品のデザインのみならず、Baccarat Chritofleのパヴィリオンの外装、内装デザインも手がけた。
グラス類、花器、動物の彫刻、香水瓶、アクセサリーなど、あらゆるジャンルのバカラ製品をデザインし続け、バカラの伝統を守りつつモダニズムを反映させ、20世紀のバカラのフォルムや装飾スタイルを豊かにした功労者と称えられる。
シュヴァリエのデザインは、非常にアールデコ的でありながら無機質な感じが全くなく、優しく、夢があり、生命感が溢れ、音楽が感じられる。

Degué  (Cristallerie de Compiègne)  ドゥゲ(クリスタルリー・ド・コンピエーニュ)
ドゥゲ"Degué"はアーティストの名前ではなく、コンピエーニュ・クリスタル工場またはパリに籍を置くこの工場の工芸ガラス部門『ドゥゲ工芸ガラス』の社主David Guéronダヴィッド・ゲロン(トルコ出身 生没年不詳)の名前をもじったブランドネームである。
1926年から1939年まで存在したこのブランドは、今日なおアールデコ・ガラスの有名ブランドとして広く知られ、特に照明器具は人気が高い。
初期にはガレ風、ドーム風、シュネデール風な作品が多かったが、1928年に才能豊かな陶芸家Edouard CAZAUXをデザイナーに迎えてからはオリジナルな作品が作られ、Degué=CAZAUX と専門家の間では認識されている。
アールヌーヴォー色を残す鮮やかな色ガラス作品と、型でプレス成形された幾何学的なアールデコ作品とがあり、いずれも同じサインがされているが両者は全くキャラクターが異なる。

左から..Goupy 花器1920-25年・瓶1925年 Chevalier 香水瓶(Lubin社のl'océan bleu)1925年・キャラフとグラス『噴水』1925年(アールデコ博出品作) Degué プラフォニエ・パフュームランプ1930年代

アンティック姉妹社でご紹介中のDegué作品もご参照下さい。