フランス骨董界といっても幅広く、上はオート・エポックといわれる中世から17世紀ぐらいまでの本物の時代家具などを扱う骨董商antiquaireから、庶民の家の屋根裏から出てきたようなただ古いだけの物を扱うbrocanteurと呼ばれる業者までありますが、
expertを兼ねたantiquaireは別として、私の見るところ平均的に不勉強で時代様式に疎い人が多いです。
アールデコとアールヌーヴォーの違いさえ把握しておらず、両者を逆に思っていたり一緒だと思っていたりする業者のなんと多いことでしょう!そんな人達がいるおかげで値打ち物を安く入手することが出来たりする訳なんですけどね、実は。
かく言う私とて専門的に勉強した訳でもなく、少なからず独断的、感覚的な見解でアンティックを見ているのですが、そんな私なりの判別基準を比較的身近な物を例にとって、大雑把にまとめてみようと思います。
姉妹社ショップ陳列品の説明文の注釈として、また西洋アンティック初心者の方達のご参考として役立てて頂けましたら嬉しいです。
(ここでは本物とコピーの違い等という次元ではなく、飽くまでも様式すなわちスタイルの特徴を表すのが目的ですので、
例としてあげる画像は必ずしもその時代に作られたものとは限りません。)
中世やルネッサンス時代の様式は身近な品の中に見ることは少ないので省き、以降古い順にいきます。
【 ルイXIII世様式 】1589年-1661年
中世風な素朴さを残した重々しいスタイル。暗い色の木材にシンプルな彫刻をほどこしたり、捻り棒装飾を用いたり、タピスリー風な織布を併用した家具などが代表的。基本的なラインは直線系。シャトーホテルなどでこのスタイルの家具を置いている所が多い。
1843年出版の家具の様式に関する本の挿絵より |
【 ルイXIV世様式 】1661年-1700年
ルイ13世様式からルイ15世様式に移行する過渡期的スタイル。前者の重厚感を残しながらも、より装飾的で華やかさが加わる。
家具なども生成りはほとんど見られなくなり、金銀彩、寄木模様、金属や鼈甲を象嵌したりなど、全面的に装飾が凝らされ、
派手で豪華になる。太陽王と呼ばれたルイ14世の好みが反映された華麗でパワフルな様式。ロココ様式を予感させるコキーユや植物のモティーフ、控えめな曲線が現れ始める。続くレジョンス様式(摂政時代様式1700年-1730年)ではこの傾向が一段と濃くなり、ラインが益々柔らかくなってゆく。
赤大理石、金箔を貼った脚部、コキーユの装飾のテーブル |
【 ルイXV世様式 】1730年-1760年
ロココ様式と言い換えた方がイメージしやすいかも知れません。ルイ14世時代末期からレジョンス時代にかけて芽生えた曲線的な
ラインは更に女性的になり、優美さと繊細さを増してゆく。前時代まではシンメトリックだったコキーユのモティーフもいびつになり、
ロココの語源であるロカイユつまり岩のように歪みや透かし穴を見せるようになる。また、薔薇やその他の花のモティーフも使われ始める。ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人の好みが反映されたスタイルとも言われ、特にルイ16世様式への過渡期のスタイルは
ポンパドゥール様式と呼ばれることもある。短い期間であったにもかかわらず、ルイ15世様式はフランス装飾史上とても重要な位置を占め、最も後世に影響を及ぼしたスタイルといえるかも知れない。ナポレオン三世様式、アールヌーヴォー様式もこの流れを汲むものであるばかりか、近代、現代に至るまで執拗に模倣および借用され続けている永遠のスタイルである。
木彫のロカイユが典型的なコンソール |
アールヌーヴォーとロカイユのコーディネート(左) ジャポニズムとのマリアージュ(右) |
この後、ルイXVI、ナポレオン、ルイ・フィリップ、ナポレオンⅢ、アールヌーヴォー、アールデコと続きますが、きょうはこの辺で。
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