2014年1月30日木曜日

アンティーク・ガラス用語豆辞典 《カ行》

去年の暮れから待っているのに、今年になって、1月も終わるというのにパリでは未だ雪が降りません。暖冬です。
風邪だけはしっかり引きました。暇過ぎるせいかも知れません。なんだかつまらない…。
特にお知らせしたいことも、記録しておきたいことも起こらないので、ガラスのお勉強を続けることに致しましょう。


型押し(プレス成形)
金属などで作った凹型の型に溶けたガラスを流し込み、凸型の型を押し付けて成形する量産、機械化に適したガラス成形法。型の精密度によってカットガラスや彫刻したガラスと見紛う作品まで制作可能。

型吹き
金属や木などで作った型の中に、吹き竿に絡め取った溶けたガラスを吹き込んで中空の器などを作る成形法。一つの型で同じ形や装飾のものを繰り返し量産することができる。ラリックは職人が息を吹き込む代わりにコンプレッサーで圧縮空気を送り込む方法を考案し、これによって型の細部まで均一にガラス種が押し付けられ、複雑なパターンも鮮明に再現されて量産された。

カットガラス(切子)
成形後にグラインダーと研磨剤を用い表面を削ったりカッティングで模様を刻んだガラス製品。職人の手仕事によって加飾されることを強調してハンドカット・ガラスともいう。比較的厚手のクリスタルガラスに幾何学的な模様をほどこしたものが多い。グラヴュールが絵画的で彫りが浅い加飾法であるのに対し、カットは彫刻的で彫りが深く、多くの断面に光が反射してキラキラする効果を生かした加飾法である。和ガラスでは切子(きりこ)という。


カボション cabochon
ガラスの表面に、宝石のカボション・カットのようにツルンとした丸いガラスの小塊を溶着する加飾法。本体とカボションの間に金・銀箔を挟み込んだり、本体の色と違う色ガラスを使うなどして宝石が象嵌されいるかのような効果を出す。ガレやドームの古い少数制作品に見られる技法で、たいへん珍重される。

カメオ・ガラス cameo glass
色被せガラスに浮き彫り(レリーフ、カメオ彫り)を施したガラス。貝や石を用いた宝飾品のカメオに似た技法なのでこう呼ばれる。古代エジプトやローマのガラス、また中国の乾隆 ガラスにも見られる技法だが、近代ではアール・ヌーヴォーのガラスに多用された。彫り方は石やヤスリによる手彫り、ホィール・エングレーヴィング、アシッドなど多岐にわたる。

カリクリスタル kali crystal(カリガラス)
鉛を含まず、カリウムを主成分とするクリスタル・ガラス。16世紀末のボヘミアで開発されたブナの木やシダの灰を原料に用いるガラスで、17世紀以降近代までのボヘミアン・グラスに代表される。透明度と硬度が高く、グラヴュールに適しており、現代でもロブマイヤー、モーゼル、テレジアンタールなどのガラス器はカリクリスタル製。

被せガラス →色被せガラス

ギヤマン
江戸時代のガラスの呼称。語源については諸説あるが、オランダ語のディアマン(diamant ダイアモンド)を勘違いした上に発音を訛ったという説が一般的である。因みに当時のもう一つのガラスの呼称『ビードロ』は単純な吹きガラスを指し、『ギヤマン』は高級なカットガラスを指したという説もある。

キャスティング casting(鋳造)
鋳型に溶けたガラスを流し込んで充填し、徐冷して固める成型法。原型や鋳型の素材により、一点制作から量産まで、またコインのような物から彫像のような立体的な作品まで、幅広く多様な造形に用いられる技法である。


切子(きりこ) →カットガラス

クリスタル crystal glass(クリスタル・ガラス)
クリスタルは本来水晶を指すが、水晶のように輝く透明で高品質なガラスをクリスタル(正しくはクリスタル・ガラス)と呼ぶ。現代では一般に原料に酸化鉛を使った『鉛クリスタル』を指す。バカラ、サン・ルイ、スワロフスキーなどがクリスタル専門メーカーとして有名。

グラヴュール gravure →エングレーヴィング

グリザイユ grisaille
本来は黒の濃淡で描かれたモノトーンな絵画のことだが、白っぽいガラスの表面に黒っぽいエナメル彩で描かれた風景画などもグリザイユと呼ばれる。19世紀末のドームの作品に多く見られる。因みにグリザイユはフランス語で、grisはグレーを意味する。

乾隆(けんりゅう) ガラス Quianlong glass
中国清朝の乾隆帝(在位1735年~1796年)の時代に作られたガラス器の総称。この時期中国のガラス工芸が一気に発達し、最盛期にはアラビアやヨーロッパにまで手の込んだガラス器が輸出された。色被せに浮き彫りを施したいわゆるカメオ・ガラスが特に有名。エミール・ガレのカメオガラスも乾隆ガラスに影響を受けたと言われている。

虹彩ガラス →イリデッセンス

コア・ガラス core-formed glass(コア成形ガラス)
コアとは核とか芯を意味する英語で、金属棒を中心に粘土などで作った芯に溶けたガラスを巻きつけて成形し、固まった後で芯を抜く技法で作られたガラス器をコア・ガラスと呼ぶ。素地と異なる色ガラスを重ねて巻き付け、熱いうちにに尖った物で引っ掻いたりなどして模様を付ける(掻き上げ文、ネイルシーnailsea文)。古代メソポタミアで始められた最も古い技法であるが、改良や工夫が加えられて現代も用いられている。

ゴールド・サンドウィッチ gold sandwich glass
二重の透明ガラスの間に金箔を挟み込んだガラス器。ローマ時代に流行した技法だが、それを応用した18世紀のボヘミアン・グラスのゴブレットなどが特に知られている。ピッタリと重なる相似形のガラス器を作り、小さい方の表面に金箔を貼り付け、色々な絵柄を切り出して装飾したものを大きい方の中に重ね合わせ、接合部を溶着した特殊な二重ガラスで、幻の技法といわれ非常に珍重される。資料画像のように底部分に更にルビーを挟み込んだものもある。



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