2014年2月8日土曜日

アンティーク・ガラス用語豆辞典 《サ行》

いよいよソチ冬季オリンピック開幕ですね。今パリ時間16:30ですが、もう30分もしたらオープニング・セレモニーが始まるらしいので、久々にテレビを観ます。
2月に入ってもパリは依然として寒くなりません。このまま春になりそうな気配で、何かやることを忘れているようなスッキリしない気分なので、せめてソチの映像を見て冬を感じたいと思います。


サティネ satiné(フロスト加工)
本来サテン(絹織物)のように滑らかで光沢のあるという意味のフランス語の形容詞だが、サティネされたガラスとは、酸やサンドブラストなどで表面をマット状に加工した半透明なガラスを指す。曇りガラス、磨りガラスともいう。英語では霜に覆われたような(frosted)という表現を用いるところからフロスト加工ともいわれる。ジヴレ(後述)よりも滑らか。

サリシュール salissures
不純物、汚れという意味のフランス語だが、溶けたガラス素地に金属酸化物の粉末を混入し、天然石のような色の斑文を作り出すガラスの着色法。パリ派のウジェーヌ・ルソーやナンシー派のガレなどアール・ヌーヴォーの作家が主に東洋趣味な作品に用いた技法。

酸化腐食彫り →acide

サンドブラスト sandblast
金剛砂などを圧縮空気でガラスの表面に吹き付けて削る加飾方。一種のグラヴュール。削らない部分を保護膜で覆い、模様を彫刻する。砂の当て方によって彫りの深さを自在に調節してニュアンスを付けたり、立体的な作品を作ることもできる最もシンプルなガラス彫刻技法。元々船舶の錆落とし用に開発された技法で、1920年代以降ガラス工芸に応用されるようになった。

ジヴレ givré
霧氷に覆われたという意味のフランス語で、ガラス用語としては酸による腐食(アシッド、エッチング)やサンドブラストを用いてガラスの表面を荒らし、凍りついたような梨地や霧氷模様にすることを指す。広い意味でフロスト加工ともいうが、サティネ(前述)よりも凹凸が大きくザラッとした仕上げをいう。初期(19世紀末)及びアール・デコ期のドームの作品に多用された。


シール・ペルデュ cire perdue(ロスト・ワックス鋳造)
シールは蝋、ペルデュは失われたという意味のフランス語で、英語のlost-wax に当たる。蝋型鋳造ともいわれ、もともとブロンズなどの鋳造技法であったが、これを応用したガラスの技法。蝋で作った原型を耐火石膏などで覆い、固まった後に加熱して蝋を溶かして除去し、できた空洞(鋳型)に溶けたガラスを流し入れ(またはガラスの砕片や粉末を充填して焼成し)徐冷した後、石膏型を解体してガラスを取り出す。粘土などで作った原型から雌型を取って蝋型を作った場合には、何度か繰り返し同じ型の作品を作ることができるが、多くの場合、1点から数点の少数制作に使われる技法。ルネ・ラリックやパット・ド・ヴェール作家のデコルシュモンの作品が有名。

ステムウェア stemware
脚付きのドリンキング・グラスの総称。stemは茎や軸を意味する英語だが、脚付きグラスの脚の部分をステムと呼ぶ。因みに脚の無いグラスは一般にタンブラーと総称される。

ステンドグラス stained glass
字型の断面を持つ鉛の枠で、色ガラスの小片を繋ぎ合わせてパッチワークのように絵や模様を表現したガラスのパネル。中世ヨーロッパの教会の窓に使われたのが始まりで、フランスで発展した。12世紀の代表的なゴティック建築の一つであるシャルトル大聖堂のステンドグラスは特に有名。19世紀末のアール・ヌーヴォー期には個人の邸宅、銀行、デパートなどの建物や、ランプシェードなどにも大いに使われた。因みにステンド・グラスとは本来着色されたガラスという意味の英語で、フランス語ではvitrailヴィトライユという。

スフレ soufflé
スフレとは吹いた(空気を吹き込んだ)という意味のフランス語で、吹きガラス全般を指す言葉でもあるが、アール・ヌーヴォー、アール・デコのガラスの場合、特殊な技法を意味する。例えば、ガレの第三期工房時代の作品に見られる果実や花や動物が著しく立体的にレリーフ状に吹き出された型吹きの花瓶や、マジョレルの鍛鉄の枠に吹き込んで枠の外にガラスをはみ出させた一連のドーム/マジョレルの器などを特にスフレ作品と呼んでいる。




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