2013年3月9日土曜日

アンティーク・ガラス豆百科 -その7-

パリも急に春めいてきて、昨日など私の部屋の窓から蝶々が舞っているのが見えました。
庭の小さな花も咲き始め、だいぶ日が長くなってきた夕方には、高い杉の木の天辺などで歌ツグミや黒歌鳥が
ノド自慢コンクールをやり始めました。
少し中断してしまいましたが、きょうからまたガラスのお勉強の続きをします。

【イスラム・ガラス】8世紀から14世紀中頃まで
後のヴェネツィアンやボヘミアンはもとよりアールヌーヴォーやアールデコのガラス工芸にまで深く長く影響を及ぼしたイスラム・ガラスですが、その華麗なる大発展はローマン・ガラスやササン・ガラスの主な生産地をほぼ全て網羅する広大なエリアをイスラム世界がカヴァーした事に起因するといわれます。
ローマン・ガラスやササン・ガラスの伝統や技法を全て受け継ぎながら、芸術や学問や贅沢を好むスルタン達のバックアップを得て更にその技術を発展させたのです。
初期のものはササン・ガラスの名残を色濃く留めた円文装飾のシンプルなものや、レリーフカットで動物などを彫り出したもの、無色に色ガラスを被せてカットを施したカメオなどがあります。
素朴さを残しながらも、ガラスは薄くなってゆき、どんどん優雅さを増してゆきます。
11世紀にはエナメル彩色技法が考案され、これが13世紀から15世紀にかけてイスラムガラスを華々しく発展させることになります。
モスクランプや壷、杯などにエナメル彩でアラビア文字(コーランの一節など)を入れたり、アラベスク模様を金彩で描いたりした装飾的な美しいガラス器は『イスラムの華』とたたえられ、ヨーロッパのキリスト教世界からも欲しがられるほど有名になっていきました。
イスラム・ガラスは16世紀に一時衰退したものの、17世紀以降に復興して19世紀初頭まで続き、東西のガラス工芸に大きな影響を与え、ヨーロッパの近代ガラスもその技術の基礎の大半をイスラム・ガラスに負っているといっても過言ではないようです。

(画像はクリックすると拡大して見られます。オレンジ色文字をクリックするとミュージアムの詳細ページにリンクします。)
吹き+カットのカップ   型吹き+カット+アプリカシオンの水差し   兎文カメオの瓶   馬文レリーフカットのゴブレ

金彩+エナメル彩の花瓶    アラベスクと人物文金彩+エナメル彩の巡礼者用瓶    エナメル彩のモスク・ランプ

鵞鳥首薔薇水撒水瓶2点  エミール・ガレ作モスクランプ型花器 1878年製  ブロカール作ネオ・イスラミック瓶 1865-1880年製   




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